破壊性から引き戻る

  • 2020.08.09 Sunday
  • 16:31

映画『風の谷のナウシカ』を観ました

 

 

言わずと知れた超名作

劇場で観るのは初めてだったのですが

大感激しました

 

人は、激しい憎しみや恐怖で心がいっぱいになり冷静さを失うときと

感謝とか思いやりとか、自分のせいで相手を傷つけてしまったという罪悪感を取り戻すときの両方の間を

行ったり来たりしています

専門的には前者を妄想分裂ポジション、後者を抑うつポジションと呼びますが

健康度が高い人は、一時的に前者に傾くことはあっても

ちゃんと後者に戻ってくることができます

この二つのポジションの行ったり来たりが、映画の随所に見て取れます

 

大好きなのが、ナウシカとテトが出会うシーン

自分が脅かされるという恐怖と憎しみを、テトは激しくナウシカにぶちまけます

それに対してナウシカは、噛みつかれた痛みに耐えながら、変わらない態度であり続けます

すると、「攻撃しても報復されない」ことを体験したテトは

たった今、自分が噛みついたナウシカの手を、今度は優しくなめ始めます

自分が傷つけてしまったという罪悪感とともに、その傷を癒すように

そして生まれる信頼関係

ナウシカが「怯えているだけなんだよね」「ほらね、怖くない」とテトに伝え続ける姿なんて

まるで心理療法の治療者のようです

 

父親を殺されたナウシカが怒り狂い、トルメキア兵たちを殺しまくるシーン

ナウシカはそもそも「殺してはならない」という信念の持ち主

そんな彼女が怒りで我を忘れるのはこのときだけです

一方で、彼女は自分の中にある暴力性を恐れてもいます

優しさと同居する激しい攻撃性

その間を揺れ動く彼女の姿は、あまりにも生々しく人間らしい

 

怒りで我を忘れるといえば、王蟲です

眼を赤くした王蟲たちもまた、凄まじい破壊性をもって風の谷に突進してきますが

ナウシカの心に触れると冷静さを取り戻し、自分たちの住処に帰っていきます

妄想分裂ポジションから抑うつポジションに引き戻ったわけです

 

憎しみに駆り立てられるのは『もののけ姫』のタタリ神も同じですが

タタリ神の場合は、憎しみがやがて己の身をも滅ぼします

相手も自分も、森もタタラ場も滅びます

死と破滅を経た再生の物語です

対して『風の谷のナウシカ』は、破滅ではない

慈しみと優しさで、王蟲たちも、風の谷も、ナウシカ自身も救われ、生き延びます

 

憎しみに心を奪われてしまっている状態から、いかに引き戻るか、引き戻すか

タタリ神のように心が滅んでしまう前に

治療者としても、一人の人間としても、たくさんのヒントが散りばめられている

素晴らしい作品です

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